2022.04.21
親が認知症に。親名義の不動産を売却するには?
認知症になってしまった親の介護施設入所に伴い、その費用にあてるため空き家となった親名義の不動産を売却したい、というご相談をいただくことがあります。
このような場合、通常の手順では不動産を売却できません。
なぜなら、認知症になって認知機能が衰えると、記憶力が低下したり適切な判断ができなくなったりして、そもそも法的に有効な契約を結べなくなってしまうからです。
しかし、親が認知症になってしまったとしても、身内の不動産を売却する方法は存在します。
今回は持ち主が認知症になった場合の不動産売却の方法をご紹介いたします。
成年後見制度を利用して不動産売却
成年後見制度とは、「意思能力のない本人の財産や資産を、本人のために管理できる人」を指名する制度のことです。
通常、預金の引き出しや不動産の処分といった財産の扱いは、所有者本人しかできません。
しかし、成年後見制度に指定されれば、本人のためになることであれば不動産売却も可能になります。
●成年後見制度とは
成年後見制度とは、判断能力が不十分な人が不利益を被ることがないように家庭裁判所によって選任された成年後見人等が、本人に代わって財産や権利を守る制度です。
この手続きを行えば、子が成年後見人になることで「親の代理」として不動産の売却(売買契約)をすることが可能になります。
成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。
【法定後見】本人の判断能力が不十分になってしまった時に行う
【任意後見】本人の判断能力が低下した場合に備えて行う
これらの権限や職務の範囲は家庭裁判所によって決定されます。
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家庭裁判所への申し立て
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家庭裁判所の調査官による事実の調査
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精神鑑定 ※鑑定費用は5~10万円
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審判
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審判の告知と通知
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法定後見開始 ※東京法務局にその旨が登記されます
申し立てから法定後見の開始までは2ヶ月~3ヶ月ほどかかることが多く、ある程度の期間を要します。また状況によって想定どおりに進まない場合もあるので、余裕をもって進めるのがよいでしょう。
●不動産の売却
成年後見人になると、被成年後見人(親)のために必要がある場合、代理で不動産を売却することが可能になります。まずは不動産会社に物件の査定を依頼し、成年後見人としての売却であることも相談して販売活動を進めていきましょう。
とはいえ、居住用不動産(実家)については自由に売却できるわけではなく、家庭裁判所に申し立てを行って処分許可を得る必要があります。
成年後見制度とは「判断能力が不十分な人に代わって財産や権利を守る」ものなので、居住用不動産を売却することが本人のためになるという、必要性や妥当性がなければいけないということです。家庭裁判所の許可を得ずに行った契約は無効となります。
家庭裁判所への申し立ては購入者が見つかって不動産売買契約をした後に行い、不動産の全部事項証明書や固定資産評価証明書の他、契約書案や不動産査定書などの提出が求められます。許可が出るまで約1ヶ月程度かかります。
売却する場合、賃貸にする場合のどちらもメリット・デメリットがあります。
どちらを選んだらいいのかは、お客様のご状況やご希望次第です。
どちらにするのか、検討中の方はぜひ当社にご相談ください。認知症や意識障害などにより自分で売却が行えなくなった場合は、成年後見制度を利用することになりますが、成年後見人になっても居住用不動産を売却するには、家庭裁判所の許可が必要です。
そのため通常の売却とは違い、家庭裁判所の許可が出るまで決済(引渡し)できない点を踏まえて進めることや、許可がおりなかった場合は白紙解約になる特約を定めておくなど、仲介を行う不動産会社の経験も重要になります。成年後見人として不動産の売却を検討される際は、そうした点も考慮して不動産会社を選ぶようにしましょう。もしご不安なことがあれば、当社までお気軽にご相談ください。